コロナウイルスとワクチンとBCGと(後編)

Science

こんにちは、SHIN(シン)です。

バイオ系が専門で、博士号を持っています。現在、在米5年目で研究職です。

このサイトでは科学と技術に関する情報をみなさんと共有することで、世の中に流布する大量の情報に対して自分で判断し行動できるようになるキッカケになれば、と思っています。一言で表せば、情報リテラシーを向上させよう、ということです。

前回からの続きで主に、コロナウイルスとBCGに関してです。

それでは一緒に考えていきましょう。

 

コロナウイルスとBCG

私はコロナウイルス騒動に終止符を打つにはBCG接種で必要十分だと考えています。今回のコロナ騒動の最中に、一見コロナウイルスとは直接関係のないBCGが病気を抑えるのに効いていそうだということが話題に上がりました。現在はBCG有効説と呼ばれる非常に可能性の高い仮説です。私はJun  Satoさんというオーストラリアにお住まいの方のブログにその内容が書かれていることをTwitter経由で知りました。日本語の記事はここにまとめられています。

BCGワクチン接種は新型コロナに有効か

これはコロナウイルスと漢方薬の項で少しだけ触れましたが、改めて詳しく述べます。結論は、BCG接種をしている国のコロナウイルスの死者は少なく、逆は多いということです。BCGの菌株による差があるので細かく分類しないといけませんが、基本的な考え方はこれで大丈夫です。BCG接種は国の政策で定められている場合が多いので、国単位で分けることで単純に比べることができます。多くの場合は第二次大戦後に接種義務が定められた国とそうでない国に分けられます。また、接種の義務化をやめた国もあります。接種の義務化以前と以降で同じ国の中でも区別する対象になります。

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新型コロナウイルス国内感染の状況(図は57日時点のもの)

実際日本を例にとると、接種義務化(1950年〜)以前の人達(70歳以上)の死者全体に占める割合は上図によれば実に約83%(= (228+102)/41057日時点)にのぼります。更にこの図(や他の情報)から不明なのは国籍です。先にも挙げたように、国によってBCG接種の政策が全く異なるので国籍の情報が非常に重要なのです。もしかしたら、日本で亡くなった70歳未満のうち基礎疾患がなかった人は全てBCG接種のない外国人かもしれないのです。つまり、BCG接種世代の日本人の死者の合計は一桁、基礎疾患無しならゼロかもしれません。マスコミや政府はBCG仮説を積極的に採用する方向には動いていない、というか実質黙殺(?)、の状態なので今後も国籍情報は開示されることはないと思われます。以上が、コロナウイルス騒動を収束させるのにはBCG接種で必要十分、という理由です。しかも、日本人は義務化以降ほぼ100%の接種率なので、実は最初から騒ぐ必要など無かったのです。煽ったのはマスコミで、それに踊らされた国民がいるだけです。自粛もマスク配布も一時金の給付も全て不要だったのに、です。ここは誠に残念な部分だと思っています。今後のコロナ騒動による経済死も非常に心配されます。

また、海外に目を向ければ、現在までに死者を多く出している国(例えば、米国、英国、イタリア、フランス、スペイン)はいづれもBCG接種義務はなく、100万人あたりの死亡者数がおよそ200500で、日本の約4に比べると50125倍の差があります。当然、統計的に有意な差がある、と見なせます。米国の200BCG非接種国では最小ですが、現時点では今後更に数値が伸びる可能性が高いです。

BCG仮説に対して反論としてよくみられるのは、有意差があるからといって効くことの保証にはならない、というものです。ですが、これは疫学の観点からは実は順番が逆です。疫学とは病気に関する統計学(とそれに伴う確率論)です。有意差がある事象を見つけ出すことによって原因を探る、ということに端を発しています。別の言葉を使うと、疫学とは計算によって相関関係を洗い出すものであり、因果関係を明らかにするするものではない、ということです。

疫学の起こり、ジョン・スノウ氏

疫学の起こりについての有名な話で、

ブロード・ストリートのコレラの大発生

があります。詳しいことはこの記事に譲りますが、大事なことは、特定のポンプから出る水に問題がありそうだ、ということをジョン・スノウ氏が計算で求めた(統計的にデータを扱った)ということです。そして、汚染の原因が何か、は別に考えた(もっと言えば、問題が解決するのであれば考える必要はない)ということです。確率的に有効な策を採用しようという態度が疫学の根本です。彼自身は最初からコレラ菌が原因であると疑っていたようですが、時代的制約からすぐにこれが受け入れられることはありませんでした。実際、汚染の原因がコレラ菌であることが認められたのはこの事件の約30年後であったそうです。この場合、そこから出る水を飲まないようにするのが一番問題解決に近そうだ、というのが確率の高いことです。実際、その水を飲まないようにすることで患者が減り、問題は解決しました。繰り返しになりますが、医学系の専門家や医者を中心に、統計的に有意差があろうともメカニズムが明らかでないものはデータとして採用すべきではない、という考え方が主流のような印象ですがこれは順番が逆なのです。つまり、BCG有り無しで統計的に有意な差があるなら、メカニズムなど分からずとも充分考えるに値すると言うことです。

 また、水質汚染の例で大事なことは、地域で区切る、ということを実行したことです。これこそが疫学の基本中の基本で、今回のコロナウイルスに関する疫学調査にも直接使える方法です。実際、国や各地域ごとに分けての数値が公表されているのは皆さんご存知の通りです。当たり前過ぎてこれが基本であるということすら意識していないかもしれません。しかし、この基本に立ち返ることにより非常に見通しが良くなります。今回で言えば、欧州や米国、イラン等の国々では死者が多い(人口100万人当たり200500人、日本は100万人当たり4人程度)。つまり、日本と欧米では100倍以上の開きがあることになり、これを清潔さなどの環境要因にその原因を求めることはほぼ不可能な水準です。遺伝的背景や人種間の差も米国の事例から否定されます。衛生面で言えば、欧州と同程度か、それよりも悪いはずのインドや東南アジアでもそこまで死亡率は高くないことからも環境要因に原因を求めることはできません。BCGと同じかそれ以上に統計的に有意な差のある因子と言うのは今のところ見つかっていないのです。

BCG vaccine-induced protection from COVID-19 infection, wishful thinking or a game changer?

Is BCG vaccination causally related to reduced COVID‐19 mortality?

これら二つの最新の論文はいづれもBCGが新型コロナウイルスによる死を抑えられる可能性について述べられています。特に、二つ目は阪大の医学系教授が書いたもので、漸く日本からもこの様な意見が出てきたかとホッとした気分になります。但し、相変わらずマスコミやネット上の大手ポータルサイト等でも取り上げられることは殆どありません。つまり、一般の方々に情報が届きません。この記事で少しでも情報の偏りを正すことができればと思います。

まとめ

今回、前後半に分ける長いものになりました。もう一度結論だけ述べれば、日本人のうち70歳以下のBCG接種群に含まれる人々はコロナウイルスに対して何も恐る必要はない、ということです。コロナウイルス対策をするならば、この群に含まれない人々に対してのみで事足ります。過剰な心配やマスコミの煽動に操られることがないように願っています。

次回はコロナウイルスと治療薬について述べてみたいと思います。

 

おまけ

今回のワクチンの話の中で、インフルエンザワクチンに関しては敢えて触れませんでした。というのも、私個人はこのワクチンに対する方法及び効果に対して懐疑的だからです。インフルエンザワクチンは基本的に毎年打たないと効かないとされており、ワクチンは一回から数回接種すれば免疫を獲得できる、という原則から外れます。また、数値の比較を例に出すと、日米でのインフルエンザワクチンの接種率や年齢層に殆ど差がみられないにもかかわらず、20172018シーズン及び2018−2019シーズンではその推定死者数は日:米=2,56961,0003,27634,200です。

統計で見る日本及び2018/19シーズンにおける超過死亡の評価よりデータを取ってきました(日本の場合ははっきりと数値で表したものが見当たらないのと超過死亡という聞き慣れない数値[推定値]を用いている為、インフルエンザによる直接の死亡よりも数値が大きく見積もられている可能性が高いです。)。

CDCのサイト2017及び2018シーズン(米国の数値も推定値です。ここでは上の超過死亡という言葉は使われていません。)

統計基準が異なるので直接の比較は難しいですが、インフルエンザが直接の死因であるということにだけに限ればは1050倍近く違うと推測されます。これだけ違うと明らかに有意差ありとみるべきですが、殆どのマスコミはこの日米の差に関しては報道しません。ましてや、ワクチン接種率と絡めて述べるところなどは皆無です。これがもし、日本で製造されたワクチンが他に比べて特別よく効くから死者が少ないと仮定するなら、何故世界から注目を浴びないのでしょう。世界保健機関や米国のCDCなどの公的機関が放っておくはずがありません。現実にはそういったことは起きていないので、ワクチンの質に差があるとは考えられません。日本の医薬品業界としては、インフルエンザワクチンというドル箱?がなくならないように情報統制しているのでしょうか。更に言えば、米国も効くか効かないか分からないものを医療従事者や高齢者を守るため、ということを錦の御旗にして毎年ワクチンを製造、販売していることになるかもしれません。ここで誤解していただきたくないのは、人々を疫病から守りたいという気持ちとワクチンが本当に効くかどうかは別問題だ、ということです。本当に人々を守ることを考えるなら、インフルエンザに対するワクチンの開発方法を見直すことが先決だろうと言うことです。

ここでの私の意見が正しいかどうかはさておいて、こういった日米比較等の数値を参考にしながら自分なりの意見を形成していく、というのはどういったデータを見るにせよ有益であろうと考えています。是非、自身で確かめる、という第一歩にしてみてください。

 この他、英国のインフルエンザのデータが以下から取れます。英語の勉強がてら挑戦してみるのも良いでしょう。

Annual flu reports

 

 

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